昔の設計図
 半鋼鉄製  昭和11年に設計され、地元で製作された15両

函館水電株式会社は、梅鉢鉄工所で製作された新車を基にして100型の車体を製作したり、車庫火災で焼失したボギー車55号の車体を復元していました。車輌の設計と車体の製作に関しては車輌メーカーが絶賛する高い技術を保有していました。

昭和9年(1394年)の函館大火後に東京市電から45両の車輌を購入し、函館では200型としたのですが、これらは中古車であった為、車輪の直径にばらつきがあったり、故障も多く整備が大変だったようです。

そこで、昭和11年に新車として製作されたのが300型です。設計は帝國電力株式会社(昭和9年、「函館水電」より改称)が行い、製作は高い造船技術をもっていた函館船渠株式会社(現在の「函館どっく」)が担当しました。木造ではなく半鋼鉄車であった為、自社工場で作らずに製作を依頼した模様です。

戦前だけでなく、戦後もしばらくは活躍していましたが、昭和45年(1970年)に東京都電の7000型(函館では1000型)10両が導入されたのを契機に、予備車となり後に廃車となりました。
廃車後、312号は梁川町の公園に保存されていましたが、損傷が進んだため、後に取り壊されました。301号はしばらくの間、駒場車庫に置かれていましたが、こちらも後に解体されました。313号は、北海道開拓記念館に寄贈されしばらくの間展示されていましたが、損傷が進み、現在は覆いをかけられて非公開となっています。現在では、客車としての300型は見ることはできません。

305〜307号は、車体は取り外されましたが、台車や電動機系統の部品はそのまま流用され、花電車用に残されています(花1〜3号。正式には装飾車、装1〜3号、車籍上では302〜304号)。

 和久田康雄様撮影 306号(1954年7月23日)−許可を得て掲載


300型の設計図(『電氣車形式図集-路面電車編』より)


■300型の主な仕様
車種名称 半鋼鉄四輪電動客車
製造初年 昭和11年3月
最大長 9,100mm
最大高 3,772mm(注1)
最大巾 2,377mm(注2)
車体 函館船渠(函館どっく)
台車 住友B型SBHK-20L
自重 9.653t(トン)
主電動機 日立HS-301-13
 出力 26.01kW×2(注3)
制動装置
 電気ブレーキ(SM-3型)、
 手ブレーキ
制御器
 日立DR-BC-447型(KR-7)
車輪直径 660mm
最大運転速度 25.6km/h
乗客定員数 56人
 座席 26人
 立席 30人












 ■参考文献
  ●『電氣車形式図集-路面電車編』
   −昭和27年1月5日
     株式会社電氣車研究会

  ●『市電50年のあゆみ』
   −昭和39年10月
     函館市交通局

(注1)設計図では3772mmとなっているが、「市電50年のあゆみ」62ページの「電車車輌諸元一覧表」では3722mmと記載されている。

(注2)設計図では2377mmであるが、「市電50年のあゆみ」では2337mmと記載されている。

(注3)「電氣車形式図集」では52.2kW(26.1kW × 2)、「市電50年のあゆみ」では26.01kW × 2の記載となっている。


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