除雪車一覧
現役2両  元東京市電 出番は少ないけど明治生まれの貴重な車両

 雪が少ない為か、この冬(2001年暮〜2002年2月)はあまり出番が無かったようですが、明治生まれの大変貴重な車両です。
函館市電と札幌市電は、昨年「北海道遺産」の認定を受けましたが、この 2両は、まさに「遺産の中の遺産」といっても過言ではありません。
故郷の東京にも、このヨヘロ車は残っていません。日本中を捜しても、元東京市電のヨヘロ単車はこの 2両だけです。

2両は、大正時代(大正6年以降)に東京市電においてヨヘロ車に改造されました。改造した工場は不明ですが、田中車輌工場(現 近畿車輛株式会社)、雨宮製作所(東京/深川)、梅鉢鉄工所(大阪/堺市)の何れかではないかと考えられます。
昭和10年当時の帝国電力の資料によると、3両共、大正9年に改造されています。雪3号は、梅鉢鉄工所(堺市。現 東急車輛株式会社)、雪4号と5号は、市電浜松工場で改造(車体更新)されています。(2003.1.21訂正および追記)


かつては、6両の除雪車が在籍していました。前任地別に見ると、3グループに分かれます。
『九州車(博軌電車)』、『成田車』、『東京市電(ヨヘロ車)』の3グループです。現役は雪3〜5号の3両で雪3号と4号の2両で、何れも東京市電のヨヘロ車です。

正式には、排雪車ということで排1〜排6号だそうですが、ここでは雪1〜雪6号と記載させていただきました(『箱館ハイカラ號』の記念乗車券の裏には「排2号」ではなく、「雪2号」と記載されています)。

車番 製造年 製造工場 前任地 前任地
車番
函館
就役年
就役時
車番
除雪車改造年 備 考
雪1 1911年
明治44年
4月
川崎造船所
兵庫鉄道部
博多電気軌道

→九州水力電気
(推定)
不明 1915年
大正4年
29又は30 1936年
昭11年
廃車(除雪車改造)届は、1937年4月22日付(届出では29号)
雪2 1910年
明治43年
天野工場 成田電気軌道 不明 1918年
大正7年
39 1936年
昭11年
廃車(除雪車改造)届は、1937年4月22日付(届出では37号)
雪3 1903〜1905年
明治36〜38年
の何れかの年
大塚工場、天野工場等が候補(特定不能)
大正9年に梅鉢鉄工所で車体更新

東京市街鉄道

→東京鉄道

→東京市電
大正14年
改番
      520
→35
1935年
昭和10年
6月29日
244 1937年
昭12年
東京市電時代にヨヘロ車へ改造。244号廃車(除雪車改造)届は、1937年4月24日
雪4 1903〜1904年
明治36〜37年
の何れかの年
日本車輌、天野工場、自社工場等が候補(特定不能)
大正9年に市電浜松工場で車体更新
東京電車鉄道

→東京鉄道

→東京市電
大正14年
改番
      128
→11
1935年
昭和10年
6月30日
245 1937年
昭12年
東京市電時代にヨヘロ車へ改造。245号廃車(除雪車改造)届は、1937年4月24日
雪5 1903〜1904
明治36〜37年
の何れかの年
日本車輌、天野工場、自社工場等が候補(特定不能)
大正9年に市電浜松工場で車体更新
東京電車鉄道

→東京鉄道

→東京市電
大正14年
改番
      130
→12
1935年
昭和10年
6月28日
242 1940年
昭15年
東京市電時代にヨヘロ車へ改造。242号廃車(除雪車改造)届は、1940年1月19日
雪6 1903〜1905
明治36〜38年
の何れかの年
大塚工場、天野工場等が候補(特定不能)
大正9年に梅鉢鉄工所で車体更新
東京市街鉄道

→東京鉄道

→東京市電
大正14年
改番
      630
→32
1935年
昭和10年
6月29日
243 1940年
昭15年
東京市電時代にヨヘロ車へ改造。243号廃車(除雪車改造)届は、1940年1月19日

6両の内3両は廃車となりました。

車番 備 考
雪1 1997年廃車。2002年1月解体、アメリカのメイン州にある「シーショア路面電車博物館」(The Seashore Trolley Museum)へ寄贈。車体復元予定。 米国製単車へ台車や電動機が部品流用された。
雪2 1993年(平成5年)、「箱館ハイカラ號」(39号)として復元(車体更新)され就役中。
雪3 現役除雪車として就役中。
雪4 現役除雪車として就役中。
雪5 現役除雪車として就役中。 2003年3月6日廃車解体
雪6 1997年廃車。2002年1月解体、アメリカのメイン州にある「シーショア路面電車博物館」(The Seashore Trolley Museum)へ寄贈。車体復元予定。 米国製単車へ台車や電動機が部品流用された。

雪1号と6号は、2両を1両にして復元するそうですが、博軌電車と東京市電(ヨヘロ車)ですので、できれば別々に2両として復元していただきたいと、個人的には願っています。
何れにせよ、客車への復元が待ち遠しいです。
(2003.8.9削除)


 残った2両のササラ電車は、明治36〜38年頃製作され、大正9年に車体更新された後、昭和12年に除雪車(ササラ電車)に改造されました。明治、大正、昭和、平成の時代を生き抜いてきた車両です。東京市電のヨヘロ車は東京にも残っておりません。東京都電の保存車両は存在しても、元京都市電は存在しても、東京市電の車両は他には存在しません。元東京市電の生き残りはこの2両だけなのです。除雪車への改造はされていますが、大正9年当時の東京市電の車体を保持しているのはこの2両だけです。

 温暖化の影響で活躍の場が少なくなってしまいとても残念ですが、単なる除雪用の機械装置ではなく、貴重な文化財として保護をしていただき、子供達・孫達の世代へと末永く伝えていただけることを願っています。


排1号(雪1号) 駒場車庫  撮影:中村 信之様
JS3VXWの鉄道管理局(http://www.hcn.zaq.ne.jp/cadzy500/

「箱館ハイカラ號」になる前の排2号(雪2号) 駒場車庫  撮影:中村 信之様
JS3VXWの鉄道管理局(http://www.hcn.zaq.ne.jp/cadzy500/

トラ塗りになる前の排3号(雪3号) 駒場車庫  撮影:中村 信之様
JS3VXWの鉄道管理局(http://www.hcn.zaq.ne.jp/cadzy500/

排4号(雪4号) 2003年8月22日 駒場車庫  撮影:高橋 誠二様

排5号(雪5号) 2003年3月6日 駒場車庫  撮影:唐坂みかん様
みかん交通公園 (http://www27.tok2.com/home/piukarailandbus/

イベント用に塗装された排6号(雪6号) 2000年4月23日 撮影:きーぼー様
きーぼーの鉄道写真館(http://homepage3.nifty.com/fwkx6022/


■参考文献
  ●『日本の路面電車−震災から戦災まで−』(和久田康雄様)
    −「鉄道ピクトリアル」誌No.329〜336(1977年1月〜7月)
      の連載記事」
  ●『私鉄史ハンドブック』(和久田康雄様)−株式会社電気車研究会

  ●『千葉県下を最初に走った成宗電気軌道の電車』(白土貞夫様)
     −成田市教育委員会「成田市史研究」誌24号(2000年3月)

  ●『凾館市電の除雪電車 その雪1,2号の来歴について』(小熊米雄氏)
     −「鉄道ファン」誌1963年(昭和38年)1月号(通巻No.19)

  ●『函館市電』(川上幸義氏)
    −「もはゆに」誌No.7( 1948年12月)...東京鉄道同好会の会報
  ●『函館市電 その后』(川上幸義氏)
    −「Romance Car」誌No.8(1949年12月)..東京鉄道同好会の会報
  ●『凾館市電』(川上幸義氏)
   −「鉄道ピクトリアル」誌1954年(昭和29年)3月号(通巻No.32)

  ●『都電車両50年のあゆみ』(高松吉太郎氏)
    −「鉄道ピクトリアル」誌No.121〜131(1961年8月〜1962年5月)
      の連載記事
  ●『木製車 花やかなりし頃−大正時代の東京市電−』(高松吉太郎氏)
    −「鉄道ピクトリアル」誌No.59(1956年6月)

  ●「購入東京車主要改修一覧表」(昭和10年 帝国電力株式會社)

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(2008年10月17,18,20日写真追加掲載)




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