車輌のいろいろな分類(3)
型式にこだわらず、いろんな視点で分類してみました。
分類7は、「そういう分類のしかたもあるんだ」程度で読んでいだたければと思います。
ちょっと専門的すぎるのですが...(汗。
●分類7〜『制御方式による分類』
直接 制御方式 |
39(箱館ハイカラ號) 雪3,雪4 花1,花2,花3, 501( |
間接自動 制御方式 |
715,716,718,719,720,721 |
間接非自動 制御方式 |
8001,8002,8003,8004,8005,8006,8007,8008 8009,8010,8101 |
V V V F 制御方式 |
2001,2002 3001,3002,3003,3004 9601,9602,9603,9604 |
いきなり「制御方式」だなんて、難しい言葉がでてきて、驚かれてしまったでしょうか(汗。 モーター(主電動機)のコントロールの方式の違いによる分類なんです。
■マスコン
マスター・コントローラー。主幹制御器。モーター(主電動機)に加わる電圧を変化させ、回転数を調整する、つまりスピード調整をする為の装置。調整の為にハンドルが使われています。このハンドルは、自動車のアクセルペダルに相当します。マスコンのハンドルのところには、目盛りが刻まれていて、この刻み目のことを「ノッチ」と呼ぶことがあります。ハンドルで、ノッチをカチカチと切り替えて、モーターの回転数を変化させ、スピード調整をします。
自動車のアクセルに相当するマスコンですが、路面電車ではハンドル操作、足ではなく手で操作するわけですね。 電圧の変化は、「主制御器」に接続されている「抵抗器」の抵抗値を変化させて行います。抵抗器は、電気を熱に変えて逃す役目をしていて、この働きでモーターに加わる電圧が調整されているのです。
電車が出発する時は、いきなり600Vの電圧がモーターに加わらないようにします。いきなり600Vの電圧をモーターにかけると、モーターがいきなり高速回転をして、台車の車輪は空転し、危険です。台車やモーターを傷めることにもなります。最初は、抵抗器のほうにたくさん電圧が加わるようにし、また、2つのモーターも直列につないで、モーター1個当たりに加わる電圧を分散させます。 少しずつ加速する為に、抵抗器に加わる電圧を低くしていき、モーターに加わる電圧を上げていきます。さらに加速する場合は、2つのモーターを並列接続にすることで、分散させていた電圧を、直接各モーターへ加わるようにします。こういったコントロールを、マスコンで行うのです。
モーターに加わる電圧を抑える、別な言い方をすると、モーターに流れる電流を妨げて、回転数を調整する、その役目のために抵抗器自らは電気の力を熱に変えて働いているのです。ですから、抵抗器にあまりに負荷がかかりすぎると、熱に変える役目に限界が生じて、抵抗器が焼ききれてしまいます。
抵抗器を傷めないためには、抵抗器の使用時間を長くしない必要があります。一定の測度に達したら、マスコンの目盛りを切り替えて、抵抗器にもモーターにも電圧が加わらない位置にします。電車に電気の力が何も加わっていない状態でも、ブレーキがかかるまでは動き続けるわけですね。
モーターや台車や抵抗器を傷めず、しかも一番大切な安全運転。運転には、カーブや坂道のこと等、その路線の特徴をよく理解し、経験を積む事が要求されます。電車の運転手さんは、職人さんだと思います。
■直接制御方式
マスコンの操作により、マスコン内部にある「主制御器」の抵抗値を スイッチ式(段階的)に切り替えて、モーター(主電動機)に加わる電圧を 変化させスピードを調整する制御方式。
手元のマスコンで、マスコン内部の「主制御器」を直接コントロールする。 マスコンの目盛りが1段階変化すると、「主制御器」の抵抗値も1段階 変化する。
マスコンの目盛りは「直列」が4段、「並列」が4段の計8段切り替えが 一般的。
「直列」は、2つのモーターを電気的に直列接続し、1台当たりのモーターに 加わる電圧を低くする(モーターの回転を遅くする)目盛り。
「並列」は、2つのモーターを電気的に並列接続し、それぞれのモーターに 最大で600Vの電圧が加えられる(モーターの回転を速くする)目盛り。
加速のコントロールは「手動進段式」であり、自動車に例えると
マニュアル車。
間接制御方式と比べた場合の長所と短所
長所
構造がシンプルなので、故障する部品も少なくて済む
短所
運転台のコントローラー(ダイレクト・コントローラー)が大きめ
→その分運転席が若干狭くなる
■間接非自動制御方式
マスコンの操作により、床下にある「主制御器」の抵抗値をスイッチ式 (段階的)に切り替えて、モーター(主電動機)に加わる電圧を変化させ スピードを調整する制御方式。
手元のマスコンで、床下の「主制御器」を間接的にコントロールする。 マスコンの目盛りが1段階変化すると、「主制御器」の抵抗値も1段階 変化する。
マスコンの目盛りは、直接制御方式と同様に8段切り替えが一般的。
加速のコントロールは「手動進段式」であり、自動車に例えると
マニュアル車。
■間接自動制御方式
マスコンの操作により、床下にある「主制御器」の抵抗値を自動的 (連続的)に切り替えて、モーター(主電動機)に加わる電圧を変化させ スピードを調整する制御方式。
手元のマスコンで、床下の「主制御器」を間接的にコントロールする。
マスコンの目盛りが1段階変化すると、「主制御器」の抵抗値は連続的な
複数段階の変化をする。
マスコンの目盛りは「起動」「直列」「並列」の3段切り替えが一般的。
「起動」は、2つのモーターの直列接続に加え、高めの抵抗値に自動切換え して、台車の車輪が空転を起さないように、モーターがゆっくりと回転する ようにする目盛り。
加速のコントロールは「自動進段式」であり、自動車に例えると
オートマティック車。
簡単に言えば、自動車のオートマチック車、マニュアル車の違いと同様ということで...。
■V V V F制御方式
主電動機であるモーターに「三相誘導モータ」を使います。三相誘導モーターとは、U相、V相、W相とよばれる三つの端子を内部に持ち、それぞれの端子間の電圧と周波数を同時に変化させて回転するモーターです。このモーターは交流式のモーターです。 このモーターをコントロールしているのが、「VVVFインバータ装置」と呼ばれる装置で、この装置で制御されたモーターで動く方式が「V V V F制御方式」です。
「V V V Fインバータ装置は、内部のマイコン制御と半導体スイッチを用い、直流電圧から交流電圧を作り上げ、交流モータの「U−V端子間」、「V−W端子間」、「W−U端子間」にそれぞれ120°ずつ位相のずれた交流電圧を与えて、モータをなめらかに回転させる働きをしています。
従来の直流式のモーターを使う方式に比べ、モーターの回転が滑らかで、抵抗器が不要になり、電気を熱で逃がす必要がないので、より一層エネルギー効率が高くなりました。
電圧や周波数をマイコン制御で変化させて、モーターの回転数、つまりスピードをコントロールします。このマイコンの制御によるモーターのコントロールの為の周波数の変化が、人間の耳には音楽の音階のように聞こえる場合もあるそうです。
ちなみに「V V V F」とは「Variable Voltage Variable Frequency」の略で「可変電圧可変周波数」という意味だそうです。モーターに加わる電圧と周波数を、コンピュータ制御で変化させてコントロールするわけですね。
V V V F制御方式になって、運転手さんの負担は軽くなりましたが、その反面、職人さんとしての技の見せ場が減ってしまったかもしれませんね...。
なんだか、分類のお話では無くて、制御方式や運転技術のお話になってしまいました。
この分類をする為には、どうしても避けて通れなかった話題なものですから(汗。
え?「難しすぎて理解できない」ですって....。大丈夫です。私も完全には理解できていませんし、試験に出るわけではありませんから....(滝汗。
(2001年12月13日作成 / 2010年4月6日 2014年10月19日更新)