日野光治さんから頂戴した登山記録

 登山日:2009年8月7日(金)〜8日(土)

 投稿日:2009/8/12 / 掲載日:2009/8/15

 
〜登山:プリンスルート〜
〜下山:須走口〜


はじめまして。日野光治と申します

貴サイトを参考にさせていただき、8月7・8日で登頂してきました。

初めての富士登山ということで、いろいろ体験してみようと、
富士宮口から宝永山経由で御殿場口ルートに抜けていく、通称『プリンスルート』で登頂し、
須走口で下山するという予定を立てました。

初めてでペース配分などもわかりませんから、ペースを自由に調整できるように一人での登山。
なにぶんにも登山経験自体ないですし、日ごろから運動とは縁のない生活をしてきたもので…。
登山経験も体力もない初心者が単独でメジャーなルート以外で富士登山などというと、
はたから見ると相当無茶なことをやっているように見えるかもしれません。


■富士宮口新五合目へ
 さて、富士宮駅発8時30分のバスで新五合目へ。
本来は浅間大社にお参りしてから出発したいところですが、バスの時間の都合で断念。
バスを待っている間はどんよりとした曇り空ながら、発車時刻頃になると雲に切れ間が生じて
日が差してきます。

期待しながら新五合目に到着。晴れているものの富士山は雲につつまれ、かなり低いところまでしか見えません。しかし雲が低い位置にあるのならば、その上は晴れているだろうし、別の登山道のほうでは状況も違うだろうということで、一時間ほど体をならして10時45分に登山開始。


■宝永遊歩道へ
 11時05分には六合目宝永山荘前を通過。ここから、登山道を外れて宝永遊歩道へ。10分ほど進むと、宝永山方面への道と須山口方面への道の分岐点につきます。

この日は小学生の遠足か何かがあったのでしょうか。火口底からこの分岐までの間に多数の小学生がおり、火口底に向かって下っていく私に「お兄さん、もう少しだからがんばれ!」などと声をかけてきます。そんなに疲れているように見えたんでしょうかねぇ。

いや、でも明らかにおじさんの年齢の私にお兄さんって言っているし、年齢を疲れと勘違いされたんでしょうかねぇ…。実際のところ全然疲れていませんでしたし、火口まで行って帰ってくるだけの小学生とは違って、私はまだまだ先が長いのですから、こんなところで疲れてなどいられません。

そんなこんなで火口底に11時24分に到着。
しばし休憩の後11時30分に宝永山山頂を目指して出発します。


■宝永山山頂へ
 この宝永山への道は砂礫で、一歩進むごとにズリズリとすべり、なかなか思うように進めません。
御殿場口から宝永山経由で富士宮口に下山するという方も少なからずいらっしゃるようですが、それが正解のような気がします。ここは登る所じゃなくて下るところではなかろうか。とは言っても今更引き返すわけにもいきませんし、前進あるのみ。

ここで役に立ったのがトレッキングステッキ。滑ってバランスを崩してもステッキをつきなおすことによって転倒は免れます。ただ、今回私が持っていったステッキは一本だけ。最近はやりの二本使いだったら、もっと小さな動作でバランスを回復できたでしょうか。それに滑って思うように進めない状況であればこそ、ダブルストックで推進力をアシストしたほうが効率よく登れたようにも思います。
自動車だって不整地走行には四輪駆動のほうが有利。それと同様でしょう。

そんなこんなでなんとか宝永山山頂に到着したのが12時25分。
下界を見下ろそうとしたのですが、眼下に見えるは雲ばかり。とりあえずここで昼食をとりながら休憩。


■御殿場口登山道へ
 12時40分に宝永山を出発するのですが、このころになるとだいぶ雲も拡がってきます。宝永山の稜線の火口側は晴れ、反対側は雲の壁という状況。目指す御殿場口ルートに向けて、その雲の中に突入します。

霧の中も含めて、歩くこと約20分で御殿場口下山道にぶつかります。ここから約10分、御殿場口下山道を『登る』と御殿場口登山道への連絡ルートにつきます。プリンスルートと書かれた標識が何箇所かに設置されているのですが、贅沢を言えば、連絡ルートに近くなってからではなく宝永山からの道と下山道の合流点付近から標識が設置されているほうが親切な気がします。それとも霧などのせいで私が見落としていたのでしょうか。

約10分ほど進んで、13時20分に御殿場口登山道に接続。連絡ルートに入ってからは人を見かけることがありません。さすが、すいている御殿場ルート。いや、霧で見えなかっただけなのでしょうか。


■七合五勺砂走館に到着後仮眠
 14時14分には七合目日之出館前を通過。このころになってやっと霧を抜けます。この日の目的地まであとわずか。そして14時36分に、七合五勺砂走館に到着。この日はここで宿泊です。

本当は七合九勺赤岩八合館に宿泊したかったのですが、予約の時、赤岩八合館は団体客がいてほぼ満室といわれたので、こちらを予約しました。

富士宮口から砂走館まで約4時間程度と見積もり、砂走館から赤岩八合館までが約40分。運動不足のうえ初めての登山ということで普通の人より遅くなることを加味して一時間の余裕を盛り込み、16時20分頃に赤岩八合館に到着というのが当初の予定だったわけですが、砂走館までのうえ、順調に進んでこれてしまったため、かなり早い時間に到着してしまったわけです。

この時間ならまだ、一回山頂まで登ってここまで降りてくることも可能かもしれないと思ったのですが、ここで体力を使ってしまうと、翌日もう一度山頂まで登って須走口に下山するという予定に支障をきたす可能性もあります。ということで、夕食までの時間、まだ他のお客さんが来る前にさっさと仮眠をとることにしました。


■砂走館もカレーのお代わり自由
 18時頃に外の様子を見に行くと晴れており、翌日に期待が持てる状況。しかし下界はやはり雲に覆われており、時々雲の切れ間から山中湖が見える程度。

18時40分頃に夕食。赤岩八合館の姉妹店だけあってこちらもカレーお代わり自由。

この夕食時に小耳にはさんだのですが、この砂走館、築後かなりたった建物なので、現在建て替えの申請をしているそうで、許可が下り次第、早ければ来年には利用できなくなるそうです。数少ない御殿場口の山小屋の一つが、一時的とはいえ一軒減るというのは登山客にとって影響が大きそうですね。でも、新しくなった砂走館を楽しみにしておくことにしましょう。夕食後は、出発時間までまた睡眠。


■深夜に砂走館を出発
 8月8日1時頃起床。頭と体が目覚めるまで時間を潰します。
ここで予想外の事態。外に出てみたら雨が降っています。どうするか。迷った末、とりあえず登ってみることにしたのですが、この迷っている間に当初の出発予定時刻を過ぎてしまっていました。この遅れがあんな結果を招くとは…。

2時05分に砂走館を出発。薄手の長袖シャツ、厚手の長袖シャツ、セーターの上にレインコートを着たのですが、比較的気温が高かったのか、風があまりなかったせいなのか、暑かったです。もう一枚少なくても良かったでしょうか。もともと私は寒さには弱くはなかったのですから、たとえもう少し気温が低くなることがあるとしても一枚減らして荷物を減らしても良かったかもしれません。


■赤岩八合館に到着
 なんにしても暑さと雨で気が滅入っていることで歩みは遅くなりがち。それでも2時48分には赤岩八合館に到着。ここまでですでに疲れを感じています。3時00分に出発。このころには雨もだいぶ弱くなってきます。レインコートの前を開けて多少なりとも熱を逃がしつつ進みます。雨がやんだだけで、気分的にはだいぶ楽にはなったのですが、体が追い付いていかないといった感じで、特に3時35分に八合目見晴館跡を通過したあたりから足が上がっていかなくなります。空気の薄さなどは気にならなかったのですけれどねぇ…。せっかく雲の切れ間も増えて星空も見えるようになってきたというのに…。


■御殿場口の頂上に到達!
 それでも何とか銀明水前にたどり着いたのが5時00分。たしかこのころの日の出時間は4時50分位でしょうか。そう、日の出時間を過ぎてしまっています。しかも御殿場口も、頂上近辺では山の陰になってご来光は拝めないのです。当初の予定通り出発できていたら、あるいはダブルストックで推進力をアシストしていたら、もしかしたら間に合ったかもしれないのに…。

そうでなければ、星空を眺めながら(真夏なのにオリオン座とか見えてるし)見晴館跡で日の出まで待機していればよかった…。


■富士宮口の頂上に しばらくの間滞在
 仕方がないので東側の小高い場所に登って5時08分ごろ、昇ってしまった太陽を眺めてから富士宮口頂上へ戻ります。ご来光を見た登山客であふれかえる富士宮口頂上でうどんを食べたり、トイレに行ったり、浅間大社奥宮にお参りをしたり、山頂郵便局で登山証明書と登頂証を購入して投函したり休憩したり…。

予想外に結構時間がかかります。そうこうしているうちに7時30分。剣が峰に向かい出発します。


■剣が峰(3776m地点)に到達!! + お鉢巡り
 剣が峰の手前の上り坂はきついと言えばきついものの、前日の宝永山や御殿場口下山道逆走区間と比べればはるかに登りやすいと感じました。

撮影待ち行列の後ろにつき、頂上に着いたのが8時03分。そののち展望台などを見物し、8時10分には剣が峰を出発。お鉢巡りを続けます。いろいろな角度から火口を覗き込むのはなかなか楽しかったものです。大内院のほかに小内院なんて小さな火口もあったんですね。

体力的にも時間的にもピーク巡りはしなかったのですが、いずれ各峰の頂上にも可能な限り登りたいものです。

8時52分に久須志神社にお参りをしつつ、9時32分に富士宮口頂上まで帰ってきます。途中の久須志岳付近を通過中のころから、雲がだんだん上がってきているのが見えました。どうやら下山も霧の中のようです。
そうそう、登っている最中もお鉢巡りの最中も高山病の症状は全く出なかったのは幸いでした。普段平地での生活でも気圧によっては頭痛になったりするので心配していたのですが、何が良かったんだろう?


■須走口下山道から下山を開始
 しばしの休憩ののち9時40分に須走口下山道に向けて出発。
お鉢巡りで通ってきた道を引き返します。富士宮口まで戻らなければもっと早くに下山できたわけですが、やはりきちんと一周してからの下山でないと気持ち悪いですからね。そして10時10分に下山を開始しました。

予想通り下山道は霧の中。ただ登りの時と違って、こっちはほかにも下山者が多数いるので、間違ってもとんでもない所に行ってしまう心配がありません。いや、登りの時に道を見失ったわけじゃないですけど。


■大陽館を通過して砂走りへ
 11時35分に大陽館を通過し、しばらく行くと砂走りの入り口に着きます。雨や霧のおかげで適度に砂が湿り、砂埃が立つこともなく快適に砂走りを楽しむことができました。途中石がゴロゴロして砂走りに適していないところもありましたが、12時42分に砂払五合目に到着します。

そういえば砂走りの最中、霧が薄くなって下山道から登山道の様子が見えたりもしたのですが、思ったより人が多かったです。渋滞とまではいかないものの、登山者が列をなしていました。須走口ってこんなに人が登る場所なんでしょうか?事前情報とは結構違うような…。


■砂払五合目を出発
 砂払五合目で休憩ののち13時00分に出発。残りあとわずか。このころしばらく晴れ間が広がったのですが、それもつかの間。しばらくしたらまた霧に包まれてしまいました。晴れていたならこの須走口の木陰道は気持ちよかったのでしょうが、霧の中ではそれほどありがたみがありません。狭いうえに木の根だらけで歩きにくい下山道を通って13時26分に古御嶽神社に到着・お参り。

当初の予定ではここから小富士遊歩道に入り、小富士へ、さらにグランドキャニオンまで足を伸ばそうと思っていました。というか、それが目的でわざわざ下山道を須走口にしたのです。しかし濃い霧。こんな霧の中で足を延ばしても、眺めもよくなく楽しくなさそうなので、今回はここで終了することにし、新五合目へ。


■須走口新五合目にゴール!!
 13時30分に東富士山荘前到着。キノコ茶をふるまわれます。ついでにここで昼食をとることにしたのですが、キノコ料理はすべて品切れとのこと。残念。昼食をとっている間、もし霧が晴れたら当初の予定に復帰しようかとも思ったのですが、結局霧が晴れることはなく、バスで御殿場駅まで。須走浅間神社あたりまで来ると晴れていますが、やはり富士山は雲をまとっていました。


ということで今回無事登頂・下山できたわけですが、ご来光は逃すし、登りの半分と降りのほとんどが霧の中で景色を楽しめなかったし、予定していたスポットのいくつかには行かなかったし、ということで、残念な面も残りました。今年は無理かもしれませんが来年あたり再挑戦しようと固く思いました。



■その他装備面等についての感想

日焼け止めは顔には塗ったのですが、「帽子をかぶってるしタオルも巻いてるから平気だろう」と思って日焼け止めを塗らなかった首の、タオルから外れていた耳の後ろあたりが日焼けしました。
日に当たったのは登りの霧のとき以外の約二時間とお鉢巡りの二時間くらいでしょうか(日の出直後はそれほど日も強くなかったですし、お鉢巡り出発前までは屋内にいることも多かった)。
その短時間でもかなり焼けるものなのですね。

ちなみに手は手袋のおかげであまり焼けませんでした。


・雨の時、リュックに百均の自転車後かごカバーを被せてザックカバー代りにしたのですが、十分使えました。ゴミ袋をかぶせて縛っている人も見かけましたが袋の中の水がたまっているのが見えました。結び目から浸水したのでしょうか。後かごカバーでは水がたまるような状態にはなっていなかったですし、見た目もゴミ袋よりはましだと思います。ただ今回は風がなかったからうまくいっただけで、強風時はきちんと固定できるザックカバーじゃないとだめかもしれません。


砂走館の場合、山頂でのご来光を目指す場合の朝食は砂走館まで降りてきてからとなるそうです(下山に別ルートを使う私は朝食を頼まなかったのですが)。山小屋によっては朝食分を弁当にし就寝前に配るところもあるようですが、皆さんは朝食っていつの時点で食べておられるのでしょう?

私の個人的な感想を言えば、登っている最中、非常におなかがすきましたから、山頂での朝食以外に、出発前にも食事をしておきたいと感じました。もちろん飴を何粒もなめてエネルギー補充をしながら登ったのですが、飴はどこまでいっても飴で食事代わりにはなりませんでした。


・トレッキングシューズが、手元にあったのがローカットのものだったので、砂走りではスパッツを装着したのですが、砂払五合目まで来たところでゴム(靴の下を通すやつ)が切れました。まぁ、スパッツ用のスペアゴムなんてものも売られているようですから消耗品なのでしょう。砂払五合目まで切れなかっただけマシであったといえます。

それはともかく、そもそもゴムが付いていないスパッツ、というか「それって腕カバー?」というようなものを付けている方を何名か見かけました。これって役に立ったのでしょうか。もし腕カバーで代用できるのなら、腕カバーは百均でも売っていますし、スペアゴムを買うより安いかなぁなんて考えてしまいます。


長くなりましたが、ほかの皆様の参考になれば幸いです。



 
すばらしい!とても参考になります!光司 - 2009/8/12

日野
さん

ホームページを参考にしていただいて、本当に嬉しいです。

富士登山が初めてのご経験で、「登りがプリンスルート、下山が須走口」という選択は、すごいことだと思います...(汗。

これは、すばらしい選択肢ですが、初めての富士登山でこのような組み合わせを選択される方は、まずいらっしゃらないのではないでしょうか。私自身、このような組み合わせは、頭に浮びませんでした...(汗。

地平線のところに厚めの雲があるときなどは、ご来光をなかなか拝めず、拝めても時刻が遅くなったりします。頂上に到着したときは、少々遅かった旨をかかれていますが、5時08分ごろご覧になったご来光でも、ありがたさは変らないと思います。天文学的には、地平線や水平線から太陽が出たタイミングを言うのかもしれませんが、上に昇った後でも十分に、ありがたみのあるものだと思います。

砂走館の朝食の件ですが、赤岩八合館もたぶん同様だと思います。ただ私は、赤岩八合館を深夜に出発した事が無く、ご来光と朝食の両方を赤岩八合館で済ませる場合が多いので、本当にそうなのか確認していませんが...。

そうですね、朝食の分をお弁当にしてくれる山小屋もありますが、赤岩八合館(たぶん砂走館も同様)の朝食は、ごはんとお味噌汁は、おかわり自由ですから(おかずは おかわりできませんが)、お弁当よりもおすすめです。お弁当のサービスはありませんが、お代わり自由のサービスがすばらしいと思っています。

週末の場合、赤岩八合館は混んでいるようですね。


とても詳細に書いてくださったので、読んでいるだけで、日野さんが体験された事の情景がうかんできます。装備面などのご感想も、これはホームページに私が詳細を書いていなかった部分で、お恥ずかしい次第です...(汗。

なので、日野さんのこの記事を読んでくださると、とても参考になると思います。

残念な部分も残った旨、書かれていらっしゃいますが、初めての富士登山で、事例の少ないプリンスルートをお一人で無事に頂上まで登り、お鉢巡りまでなさったうえ、下山は別ルートというのだからすごい...(汗。

残念に思われた部分はほんの一部だけで、それをはるかに上回る、多くのすばらしい体験をされたのだと思います。

ありがとうございました。


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