空と文字(MOUNTAIN)


高山病(山酔い)対策

高山病の防止と 万が一の対処について




 掲示板のNS−METHODさんの書きこみを拝見して、1999.8.25に急遽このページを作成いたしました。
実は、普段から体を鍛えている「健脚の方」は、まったく運動不足の私よりも、高山病になる危険性が
あったのです...。
気づくのが遅れましたが、実は、健脚の方は、マイペースではなくて、スローペースが必要だったのです!

富士山は、酸素濃度がとても薄い場所なのです。
新五合目でも、既に薄い世界で、山頂では平地の3分2程度しかありません。
地上では、浅い呼吸、無意識呼吸をしていて不都合が生じなくとも、富士山では通用しません。

「高山病」とは?
  高度が上がったことによって、人体に生じる障害。主に酸素の欠乏によって引き起こされる様々な症状。
  普段、低地に生活している人が高山に赴いたときにかかる高山病は、「急性高山病」といいます。
  富士山の登山でかかる高山病は、この「急性高山病」です。「山酔い」と呼ばれることもあります。

  症状は、「頭痛」及び、次の症状のうち、少なくともひとつを伴います。
  (1)消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐)
  (2)倦怠感又は虚脱感
  (3)めまいまたは朦朧(もうろう)感
  (4)睡眠障害

【高山病の防止】


  ゆっくり登る
   

酸素の薄い特殊な世界に、体を徐々に慣らす必要があります。
高度順応の為に一番重要なことは、やっぱりマイペース。
自分のペースをくずさないのが一番です。
ただし、例外があります。
  脚力の強い方は、意識的にペースを落としましょう。
  「マイペース」では、早過ぎるのです(^^;)。
  登山では、それは「ハイペース」とイコールになってしまうのです。
  酸素の補給が追いつきません。
  普段から体を鍛えていて、脚力のある方は、平地ではもちろん
  マイペースで構わないのですが、登山でマイペースを実践すると
  健脚であるが故に、高山病になる危険があります。
  脚力に自信の有る方には、(富士山初登頂時は特に)
  「意識的なスローペース」を、強くお勧めいたします。

  私のような、マイペースがぴったりな人と一緒に登ることで、
  自動的にペースダウンを計るのもいい手ですね(^^;)。


 休みながら登る
   

休息をとりながら登りましょう。
休息は、「単なる体力の温存」だけが目的ではありません。
富士山では、上に行くほど思った以上に「酸素の濃度」が薄れていきます。
短時間に高度を上げることは、とても危険なことなのです。
大気の酸素濃度が下がるということは、自分の体の血液中の酸素濃度も
同じく下がっているんです。これが急激に起きると、とても危険です。
どんどん酸素濃度の薄い世界へ、自分の体を進めて行く訳ですから、
できるだけゆっくりがよいのです。
休みながら登れば、体を順応させることができます。

同じ理由で、車で五合目に到着した時も、いきなり登山を始めるのではなく、
1時間くらいは五合目に留まって、体を順応させたほうがよいです。

登山中に途中で休むときは、道をあけて、後から登ってくる人の妨げに
ならないようにする注意が必要です。
後から登ってくる人が、どんどん先に行ってもあせる必要は、
まったくありません(^^;)。
足が重く感じられたら、体からの「休みたい」という合図に違いありません。
自分の体にやさしくしながら、登りましょう。
 
     

 山小屋で休息する
   

これは、必須ではありませんが、お勧めです。
上記の2と同様の理由です。
私の場合は、七合目の山小屋で4時間の休息をとりました。その場合も
一泊料金でしたが、これは大変よかったと思っています。
リーダーに、あらかじめ予約していただきましたが正解でした。
七合目の酸素濃度の薄い世界に、4時間の間、体を休めることができました。

但し、「軽い高山病の症状?」と感じたときは、寝ないでください。
横にならずに、起きた状態で休息してください。
寝てしまうと、呼吸の回数が減り、かえって酸素の摂取量が減ってしまいます。
次の「意識的な深い呼吸」をしながら休息するのが一番です。


 意識的な深い呼吸
   

酸素濃度が薄いわけですから、意識的な呼吸が大切です。
濃度が少ないなら、「呼吸回数」と「呼吸の深さ」でカバーすればよいのです。
浅い呼吸にならないよう、無意識な浅い呼吸にまかせず、意識的な深い
呼吸が必要です。



 十分な水分補給
   

「大切なこと」のところで「水は最低限にする」と書いておきながら(^^;)。
いえ、重い水を余分に持つと重たいので、疲れるのは本当です。

でも、飲みたいのを我慢するのは、危険です。体の水分が不足すると、
循環不全という状態になり、末端の組織まで酸素が運ばれなくなるのだ
そうです。
そこで、「余分に水を持たない」ことと、「十分な水分補給」を
両立させるためのポイントです。

 (1)暑い日中の登山はさけて、夜間の登山にする。
    →暑い日中より夜間の方が、体が必要とする水分補給量を
     減らせます。

 (2)持参は最低限にして、やはり多少高くても、足りなくなったときに
    山小屋で購入する。
    →荷物はできるだけ軽くしないといけません。
    →山小屋で買わなくてもいい、ちょうどいい量が背負えるなら、全く
     問題ないのですが...。

 (3)一気飲みしない。
    →「十分な水分補給=ガブ飲み」ではありません。
      少しずつコマメな補給がコツです。

 (番外)健脚の人に、水を多めに持ってもらう(^^;)
    →健脚の方の荷物を重くすることで、ハイペースに至るのを防ぎ
      高山病を防止。まさに一石二鳥.....(^^;)ヲイヲイ。

    ※「荷物はできるだけ軽く」といっておきながら...(^^;)。
      「水の持参は最低限」 といっておきながら.....(^^;)(^^;)。
      健脚の方はマイペースではなくて、スローペースが必要なので、
      いいアイデアだと思ったのですが....(^^;)(^^;)。

     もし、この「番外」を実践される場合は、ご自分たちの責任のもとに
     実施してください(^^;)。


  十分な保温
   

特に夜間登山の場合です。
体を冷やすと、血液中の酸素の有効活用が、できなくなってしまうのだそうです。
私の場合、七合目から上では、セーターの上に、さらにレインスーツを
着ました。



 お酒は危険!  
   

アルコールは、呼吸を抑制する作用があります。
お酒を飲むと、低酸素状態を加速することになります。             
どうしても、お酒がお望みの場合は甘酒で我慢しましょう(^^;)。
甘酒は、アルコールを含まず、酒類にも該当しません。

甘酒では酔えませんけど、なんとなく、お酒を飲んだ気分になれますし 
体も温まりますので、お勧めです。
【99.9.6 さめじゅんさんのお話をもとに追記】



 睡眠薬も危険! 
 

睡眠薬もアルコールと同様、呼吸を抑制する作用があります。
山小屋で眠れない場合、睡眠薬を服用するのは危険です。

通常の睡眠でも、呼吸は浅くなりがちです。これは、避けられませんが
睡眠薬で追い討ちをかけると、極端な酸素不足状態を招く危険性があります。
睡眠薬が無くても眠れるように、頑張って体を改善してください(^^;)。
【99.9.6追記】



 タバコも危険! 
 

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させます。
体全体に、酸素が行き渡りにくくなり、酸素が欠乏し、
非常に高山病にかかりやすくなります。

富士山のような高地でタバコを吸うのは、
自ら、高山病を招いているようなものです(汗。
【2011.9.26追記】



【万が一の対処】


高度を下げる   
   

高度を下げます。低いところへ移動し、酸素の濃度を上げます。         
回復したら、また登ります。
 

酸素ボンベを使う  
   

スポーツ店で1,000円程で購入できます。全然重くないので、心配な方は
あらかじめ購入して、持参してもいいかもしれません。
山小屋でも1,500円程度で購入できます。
実は、私も持参いたしました。でも使いませんでした。

正確には、試してはみたのですが、高山病の症状の時ではなかったせいで
しょうか、タイミングが悪かったのか、そのときは、効果がよくわかりません
でした。

通常は1分、持続するタイプでも2分間のようです。
残念ながら、使って体験していない為、どの位の効果があるかは、
わかりません。
そんなわけで、「お勧めのアイテム」にも「必須アイテム」にも書いて
おりませんでした。


下山する(T_T) 
   

高度を下げてみても、酸素ボンベを使っても効果がなければ、下山するしか
手だてはありません(T_T)。
懲りずに、頂上は、また来年チャレンジしましょう。



【外務省海外安全相談センターの「ペルーにおける高山病対策」】

 富士山における高山病対策の参考になると思います。

 1.元気に動き回った人ほど発症しやすい。

 2.アルコールや睡眠薬の内服は避けるべき。

 3.水分を十分に取る。

 4.すぐにエネルギーになる炭水化物を多く摂取する。但し食べすぎに注意。
   消化剤は服用してよい。
   飴はいいが、チョコレートは脂肪分が多く食欲低下の原因になるので
   高地では避けたほうが良い。

 5.首を激しく振る運動は避ける。

 http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info.asp?num=1999C025

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/cs_ame/peruacut.html

 
 富士山では元気に走り回るのは危険な行為です。酸素消費量を増加させ、高山病を招きます。
 特に、お子様と一緒に登山する場合は、お子様が走らないように十分注意してください。


【有圧呼吸法】

 国立天文台ハワイ観測所 「マウナケア山頂すばる望遠鏡訪問者安全心得」に書かれている情報です。

 気分が悪いときには早い呼吸は避け,有圧呼吸法を行ってください。
 有圧呼吸法とは大きく息を吸い込み、2秒ほど呼吸を止めるとともに、
 胸に圧力をかけるように力を入れた後、ゆっくり口から吸い込んだ空気を出す。
 これを5ー6回繰り返すと、血中の酸素濃度が上がり、楽になります。


 http://subarutelescope.org/Observing/Proposals/Visit/SafetyAdvice_j.html




【ダイアモックス(Diamox)】

 高山病の予防薬、治療薬には「ダイアモックス」という薬(製品名です)があります。
「アセタゾラミド」、「アセタゾールアミド」(これは成分名です)と呼ばれることもあります。
服用したことは無いので効果はわかりません。
関心のある方は「日本旅行医学会」のホームページに、認定医リスト(地域別)がありますので、
お尋ねになってみてください。
「日本旅行医学会」のホームページ ⇒ http://www.jstm.gr.jp/


【アスピリン】

 脱水症状によって、血管の中に不要な血栓が形成され、血流を妨げる。これが過度に生じると、
心筋梗塞や脳梗塞に繋がる場合があります。このことからも、十分な水の補給がいかに大切であるか
がわかります。
一番大切なのは、水分の補給なのですが、アスピリンを服用することで、血液をサラサラの状態にし
血栓ができるのを防ぐこともできます。

アスピリンは、製品名「バファリン81mg錠」、「バイアスピリン」として市販されています。
「バファリン」には成分「アスピリン」を含まないものもあるので注意が必要です。
また、お医者さんに処方してもらうのが推奨です。

副作用もありますので注意してください。
 ・怪我をして出血したとき、なかなか血が止まらなくなる
 ・胃腸障害になる可能性がある

参考:日本山岳会医療委員会 アスピリンの“血液さらさら”と登山について

 http://jacclimbingmed.hp.infoseek.co.jp/page-02-004.html

 ⇒http://www.jac.or.jp/info/iinkai/iryou/page-03-044.html

(2008年8月4日追記)


【腹式呼吸の練習をする】

 ●健康によい腹式呼吸

  もし、まだ登山予定日までに日にちがあるようでしたら、腹式呼吸の練習をすることをお勧めします。
 これは、高地専用ということではなく、普段日常生活をする上でもよい呼吸法だからです。
 普段の日常生活から、腹式呼吸をしていれば、富士登山でも役立ちますし、高山病になりにくい体質
 になれます。また、万が一高山病になってしまっても、有圧呼吸法の効果がすぐに出せるような体質
 に改善できます。腹筋や横隔膜を活性化させ、健康によい呼吸法なので身につけてください。

 腹式呼吸で重点を置くべきは、「二酸化炭素を吐ききる」という点です。二酸化炭素を出し切らないと、
 酸素を十分に吸うことはできません。ですので、吸うことよりも吐くことに重点を置いてください。
 呼吸の順番は、

 (1)二酸化炭素を吐ききる
 (2)酸素を吸う

 です。「吸ってから吐く」のではありません。「吐いてから吸う」のです。発想・考え方を変えてください。


 ●具体的な手順

  具体的な手順は、

 (1)大きく口を開けて、息を吐く(大きな声で「ハー」と叫ぶような感じ)

 (2)口をすぼめて(麺類をすするときのように)、さらに息を吐く(ろうそくの火を消すような感じ)
    このとき、お腹はいっぱいへこませます。

 (3)鼻から息を吸う。このとき、お腹は膨らませます。

 です。(1)と(2)は急がずに時間をかけてゆっくりでかまいません。

 さらに、イメージを加えるならば、
 (1)と(2)では、不要になったガスを排出するイメージ
 (3)では、新鮮な酸素が体の隅々まで行き渡るようなイメージ
 です。これはヨガの呼吸法にも通じるところがあります。

 日常生活の中で「大きく口を開けて」というのは、時と場合によっては難しいかもしれません。
 それでも、(2)と(3)だけなら、できると思います。

 十分に息を吐ききれば、おのずと息を吸う(新鮮な空気を取り入れる)ことができます。


 ●風船を使う

  目に見える形で腹式呼吸の練習をしたい場合は、「風船を使う」方法がお勧めです。

 (1)口をすぼめて風船を膨らます。このときお腹をへこませて、完全に息を吐き切る

 (2)鼻から息を吸う。このとき、お腹は膨らませます

 順番は(1)→(2)です。(2)→(1)ではありません。
 (1)→(2)を繰り返します。

 この練習法では、大きく口を開けて息を吐く練習はできないのですが、腹式呼吸の練習になります。
 この練習を重ねると、1回の息で膨らむ風船の大きさが、始めた頃に比べ次第に大きくなります。
 つまり肺活量が多くなるのです。肺活量が多くなれば、より多くの酸素を体内に取り込むことも
 できるようになります。目に見えてわかりやすい方法であると思います。


 腹式呼吸は、1500円の酸素ボンベを買って使うことよりも効果があります(酸素ボンベを否定してい
 るわけではありません)。小さなお子様には、なかなか難しいかもしれませんが、複式呼吸を使って
 脳をはじめ、体全体に十分な酸素を取り入れることは、とても重要なことなのです。

 腹式呼吸のおかげで、歌まで上手になってカラオケでも高得点になる....かもです。

(1999年8月25日・2008年7月31日一部追記)


 【関連記事】●富士山に登った子供の55%が高山病(山酔い)



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